挑戦に“年齢”も“未経験”も関係ない。内から外へ切り拓いた自己成長

佐藤夕佳
ネオス株式会社

2016年契約社員として、ネオス株式会社に入社。しばらくは庶務として働くも、Salesforceの本格始動が決まりその管理者に任命。いち早くSalesforce の資格を取得し、ネオスが株式会社セールスフォース・ドットコムのコンサルティングパートナーとして正式に認定されるまでチームを牽引。2018年にはその活躍が認められ、セールスフォース・ドットコムの共同創業者で最高技術責任者(CTO)パーカー・ハリスから日本で4人(2019年10月末時点)しか持っていない『Golden Hoodie』を授与された。

Salesforceとの出会い。

2016年、庶務担当の契約社員としてネオスに入社。それまでシステム管理の経験はなく、IT業界への就職が初めてであったが、社内で導入されたSalesforceの本格始動が決まったことに伴いSalesforce管理者の任命を引き受けた。

Salesforceとは米国カリフォルニア州に本社を置く株式会社セールスフォース・ドットコムが販売するクラウド型の営業支援・顧客関係管理ツールである。同社はSalesforceテクノロジーを駆使してビジネスを改革する先駆者のことをTrailblazer(先駆者)と呼び、ビジネスユーザから管理者、開発者まで全てのSalesforce Trailblazerが集まるTrailblazer Communityへの活動に力を入れている。

佐藤 「Salesforceの担当をやってみないかと声をかけられた時、私はSalesforceという名前を聞いたことがあるというレベルでした。上司に『私に出来そうですか?』と確認すると『大丈夫だと思う』と言われたので『じゃあやります』と引き受けることに。とりあえず、その時期に開催されていた『Salesforce World Tour Tokyo 2016』に参加しようと足を運び、想像以上の規模の大きさに呆然としました。もともとエンジニアでもなんでもなかった私にはそこで飛び交う用語の意味が全く理解出来ず、これは大変なことを引き受けてしまったと思いました。ただ、そのイベントの中でSalesforce Trailblazerが集まるユーザ会があることを知ったので、ひとまずそこに参加してみようと心に決め、帰ってからはひたすら勉強する日々が始まりました」

外にある可能性をどう見つけるか。

Salesforceのユーザ会はSalesforce Trailblazer達によって自発的に生まれ、運営される。国内だけで40以上のユーザーグループが存在し、管理者・開発者といった職種別のものや初心者向けから上級者向けなどレベルに合わせたもの、特定のサービス・製品を扱うグループなど幅広く用意されている。そこで知識を得てTrailblazerへと育っていった者達は、また次のTrailblazerを育てるために自分の出来ることはないかと積極的に働きかけるため、Salesforceに関係している者同士の関係構築は進み、コミュニティの輪は拡大していく。

佐藤 「担当になってすぐの頃は、とにかくいろんなユーザ会に参加しました。Salesforceには沢山の機能があるため、ひとつひとつを完璧に理解することは容易ではありません。そんな時に実際に上手くいった事例を聞ける機会はとても有難い。始めの頃は、とりあえず自分が知っている機能だけでシステムを構築してみるのですが、作っている最中もっとこう出来たらいいのにという部分が必ず生まれます。けれども、足りていない部分を補うための方法をネット上で探すのはとても大変です。もともとSalesforceは米国で誕生しているため、英語で書かれた資料が日本語に訳されていることもあり、欲しい情報に辿り着くまでに時間がかかることがあります。そんな中、ユーザ会では他社の事例をもとに新しい発見を得ることが出来るので、しばらくは事例を聞いてそこから試して学んでいくことで、少しずつ知識を増やしていきました」

Salesforceは2003年から年に一回、サンフランシスコで世界最大のソフトウェアカンファレンス『Dreamforce』を開催している。開催期間中は会場だけでなく市内のレストランやバー、公共機関にまでポスターや看板が設置され、町中がSalesforce 一色となる。2018年も『Dreamforce 』を4日間に渡り開催し、SalesforceのOhana(ハワイ語で家族の意。Salesforceではお客様、従業員、パートナー、コミュニティのことをそう呼ぶ)が90カ国を超える各国から17万人以上参加した。SalesforceはCRMで世界トップのシェアを誇り、成長し続ける企業として注目を集め、休まることを知らない。そんなSalesforceを取り囲む環境を知らずに飛び込んでいった佐藤氏は、ここに辿り着くまでどのようにして自分の役割を築いていったのだろうか。

佐藤 「SalesforceのTrailblazerと呼ばれる人達に会った時は、熱量の高さに驚きました。みなさんSalesforceのことが大好きなのが溢れ出ていて、正直、私はそこまで夢中になれるかわからないと思いました。ただ、Trailblazerの方の中には資格を持って多方面で活躍している方が大勢いました。それを間近で見ていると、しっかりやれば自分にもそういう可能性があるのかなと思うことが出来ました。その時順調にSalesforceの資格が取れていたことも、このままやってみようと思う動機に繋がりました。

昔から資格を取ることは好きなので、ネオスに入社してからも元々ITに関する知識がなかったこともあり、せめて目に見える資格くらいは取っておこうという気持ちでITパスポートや情報セキュリティマネジメントの資格を取得しました。資格は勉強をすれば誰でも取れると思いますが、Salesforceの正式な講座に通おうとすると個人では負担しきれないほどのお金がかかることもあり、無料でSalseforceの機能などを学べる『Trailhead』というeラーニングツールを活用したり、すでに資格を持っている人たちからアドバイスを受けたり、Webセミナーなどを活用することで、資格を取得することができました。

今でも、ユーザ会などイベントに出掛ける私を見て、知らない人達の集まりに行くことに抵抗はないのかと聞かれることがあります。私も最初はどうかなと思っていましたが、通っているうちに知り合いが増え、Salesforceを肴にお酒を飲む会もあるので、悩み事をざっくばらんに話せる関係がとても貴重だと感じます。勤めている会社と別のコミュニティに属すことを無理に勧める気はありませんが、違う環境で同じSalesforceを使っている人とお話が出来るというだけでも、私はプラスになると思っています」

未知であるという自覚。

Salesforceでは、Salesforce 製品を使用する各担当者の役割に必要なスキルを保持していることを証明する認定資格が用意されている。資格を保持する者は各分野で即戦力であることが証明されており、佐藤氏はアドミニストレーター(管理者)と、Sales Cloudコンサルタント、Platformアプリケーションビルダーの資格を保有している。そんな佐藤氏が2018年12月に行われた『Salesforce World Tour Tokyo』の基調講演に登壇し、米国セールスフォース・ドットコムの共同創業者で最高技術責任者(CTO)パーカー・ハリス氏から日本で4人(2019年10月末時点)しか持っていない『Golden Hoodie』を直接授与された。『Golden Hoodie』はこれまでの活躍と今後のキャリアへの期待を込めて贈られ、Trailblazer Communityを代表する一人として名を馳せるきっかけとなった出来事であったに違いないが、佐藤氏は功績に対する控えめな姿勢を崩すことはなかった。

佐藤 「『Golden Hoodie』をいただいたことで、無条件に周りからすごい人なんだと思われるようになりました。自分としてはまだまだ勉強中の身だと思っているので、恐れ多い気持ちで一杯です。ただ、『私なんかが』と言っていても謙遜にしか聞こえないと他のTrailblazerの方に笑いながら言われてしまったので、これは知らないことをなくして勉強し続けるしかないんだなと思いました。あの受賞を機に、社外に向けて何か自分が提案する際は、より慎重に準備を重ねるようになりました。

例えば提案書を作る時も登壇する時も、出来るだけ隙を作らないように気を付ける。伝えたいことのベースを作り、構成を考え肉付けしていく際に、こう書いたらこういう疑問が生まれるなとか、これを説明するためにあれも調べておいた方がいいなとか、とにかく思考の裏付けを重ねていきます。また、自分の視点で作り上げたものは必ず自分以外の人にも見てもらって、他にどんな疑問や不明点が生まれるか検証します。様々な分野で自分より知識がある人がネオスには大勢いるので、自分の視点だけで可能性を狭めてしまっていないか確認を取るようにしています」

庶務の仕事も、事業部の人と話さなければ仕事は生まれない。自分が居た場所とは全く関係のない業界へと飛び込みキャリアを築いてきた佐藤氏は、人に頼ることに全く抵抗がないと語るが、それは彼女自身が自分の立っている現地点と求められている役割を正しく理解していたからこそ、出来たことなのかもしれない。

新しいことを始める時は、何が普通で何がおかしいかすら分かりません。どんなことも一回目をやり遂げるまでが一番大変です。初めてのことを何度経験しても、その点は変わらないと思います。分からないことを分からないと言うことが恥ずかしいと言う人もいますが、社内の人は私に下地がないことを知っているので、遠慮せずに聞きますし、平気でやりますと言うと逆に心配されてしまうこともあります。

実はSalesforceに関わるまで提案書も作ったことがありませんでしたが、そうも言っていられなくなり、周りを見たら提案書をたくさん書いてきたきた社員が大勢いることに気づきました。最初は見よう見まねで始め、自分より知識と経験のある人に見てもらう。その繰り返しで少しずつわかること、出来ることを増やしてきたんだと思います」

これからのキャリア。

ネオスに入社して4年(取材当時)が経とうとしている。新卒でマクドナルドに入社し3年半後の結婚を機に退社、6年半は専業主婦として過ごし、前職では事務業務を経験後、2016年にネオス入社した時には契約社員だった。当時は想像もしていなかったというキャリアを築いている彼女に今後のキャリアについて、話を聞いた。

佐藤 「子供のことや両親のことを考えると自分自身の自立が必要だと感じます。コンサルタントの資格は持っているがきちんと出来るかと言われると、経験がまだ足りない。何をもってコンサルタントが出来ると言えるのか曖昧な部分が多くあります。

たとえば、人に何かを教えることは向いているのではないかと思います。それを軸にした仕事は面白そうですが、そのためには“何を・どうやって”教えるのかがわかっていないといけないですし、どんな分野で需要があるのか、ビジネスとして成立するのか、などを考えなくてはなりません。今はSalesforceの知識を使って何かビジネス化出来ることがないかと、色々な企画をチーム内で考えている最中です。

また将来的には、家に居ながらでも出来る仕事をすることができるといいなと思っています。まだまだ先のことだとは思いますが、両親と同居しているので例えば介護が必要になった時には家に居ながらできる仕事があるといいですね。昔と比べると会社に出社してやることが仕事というより、どこでも仕事が出来るようになってきている世の中になっていると感じます。自分の仕事も、時間をどのくらいかけたのかより、どこまでのものを作ったのかという評価が軸になっているので、その視点で仕事をどう進めていくかを考えています。とは言っても、今はまだまだ色々なことを模索している最中なので、将来のためにも今出来ることを見定めていきたいと思っています」

自分にとっての『新しい』とは、世間とは関係なく「自分の知らないこと・経験したことのないもの全て」を指す、そのため『新しい』ことへの挑戦は否が応でも続いていくと語った。

佐藤 「今も、常に新しいことしかやっていないと思っています。新しいことがやりたいというよりは、経験したことがないことの方が多いので、新しいことをやっていかないと進んでいかないという認識です。Salesforceで追加されていく新機能に対応することも、新しいお客様に向けてどういった提案をするか、チームの方針をどう立てていくかも、私にとっては全てチャレンジです。これからも、自分が自信を持って「出来る」と言えることを増やしていきたい、今はそれに精一杯向かっていくことが私の仕事だと思っています」