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第2章 新たな船出 長嶋の視点

SPEAKER

長嶋 朗
ネオス株式会社
コンシューマ&コンテンツカンパニー
シニアバイスプレジデント

Interview

「カスタモ」が軌道に乗ると、プライムワークスでも独自にIPを保持できないかといったチャレンジにも着手することとなります。その中の一つで、私が企画・デザインを手がけた「ケータイ係長」はソフトバンク向けのシャープ端末に搭載されました。時間や天気、曜日などに連動して係長が色んなアクションを見せるという、Flash技術を活用した待受けコンテンツで、当時では画期的だとして色々なメディアにも取り上げていただきました。

着信や天気情報など、携帯端としての機能面と親近感のあるキャラクター性がマッチしヒットした「ケータイ係長」

しかし、スマホの登場と共に時代が一気に変わります。ケータイ係長のように端末の機能とコンテンツを連動させるような仕組みは、端末メーカーやキャリアとのネットワークがあったからこそ実現できたのであり、端末もOSも海外製だった当時のスマホで再現することは容易ではありません。また、待受けコンテンツに課金するという概念そのものも薄れていきました。スマホになったことでユーザーはWebから好きな画像をキャプチャしたり、自分で撮影した写真をアプリで加工して待受けにすれば良いのです。スマホはガラケーのビジネスモデルを完全に覆していきました。カスタモ事業もまたシュリンクしていき、この時期は思い出したくないほどのどん底を経験しました。朝出社したあと、商談へ向かうと言って会社を出たもののすることがなく、山手線に乗りながら時間だけが過ぎていったこともあります。
何か手を打たねばと死に物狂いで考えた末に、「Kプロ」という名前で社内プロジェクトチームを立ち上げ、私含めて4人くらいで細々と再起を図ることになりました。きっかけは、ある大手玩具メーカーのキッズ向けデバイスの企画開発案件で、コンテンツからハードウェアまで一通り請け負うというものでした。これまで携帯端末にプリインストールするコンテンツの企画開発を通じて、ハードウェアの要件もある程度は理解していましたし、専用端末でコンテンツを提供するということは、そこからプラットフォーム化していくといった事業的な展望もひらけます。あらゆるリサーチに取り組み、デバイスコンセプトとコンテンツを提案していきました。しかし、プロトタイプまで開発したところでメーカー側の事情により開発中止の決断が下されます。一縷の望みを手繰り寄せようと必死でしたから、これにはさすがに心が折れかけました。

これでまた振り出しかと感じた矢先に、大きなチャンスが飛び込んできます。ドコモからスマホ向けの新たなキッズサービス「dキッズ」を立ち上げるという話が挙がったのです。キャラクターやゲーム性をフックとした知育コンテンツを企画開発し、dキッズ内にて提供していくというビジネスモデルも我々がこれまで手掛けてきた事業と親和性の高いものでした。今度こそはと死に物狂いで企画を練り、コンテンツプロバイダーとして参画にこぎつけることができました。当時、教育分野とモバイル分野の融合は新しい着眼点であり、企画にも手応えを感じていました。なによりどのようなキャラクターとも相性が良く、品位も損ねることがないテーマです。これが今も続くキッズ事業の始まりとなりました。
私はIPビジネスに関わるなかで、コンテンツの可能性を最大化することを第一に考えてきました。「子どもに人気のキャラクターでコンテンツの価値を拡げる」というキッズ事業の取り組みは、知育というフィールドにおいて最大化されていると感じています。