テクミラホールディングス株式会社 20TH ANNIVERSARY SITE

NODE ep.2 2008-2012

第2章 新たな船出

2008年に東証マザースに上場したプライムワークスは順調に業績を伸ばしていきます。一方で、モバイル業界は大きな構造変化の波に晒されようとしていました。2008年に日本で発売されたiPhoneは、発売直後はメインストリームとはなりませんでしたが、その後2010年にAndroid端末が発売され、ソフトバンクに続きKDDI、ドコモからもiPhoneが発売されるなど、日本市場においても本格的なスマホシフトが進展していきます。プライムワークスもまた、M&Aや出資設立したグループ会社群を全て統合し、新会社「ネオス」としての新しい体制を整える中で、ソリューション事業を本格化させ、スマホ時代に向けての事業転換を図って行きます。

NODE ep.2 第2章 新たな船出

スマホの台頭

2007年6月29日は池田にとって忘れられない日だ。それは、起業して初めてとも言える強烈な不安とともにやってきた。iPhoneがアメリカで発売された日である。
それを入手して実際に触った時の衝撃が今でも忘れられないと池田は語る。使い勝手、アプリマーケット、ユーザーインターフェースなど、音楽アルバムをブラウジングするCoverFlow機能などは感動的ですらあった。全てが、この新しい概念を中心とした世界になっていくというのが池田にははっきりと見えた。同時に、通信キャリアが主導した日本の携帯市場とは全く異なるビジネス構造が目の前に現れたことで、順風満帆だと考えていた自分たちの未来が揺らぐ感覚に襲われた。この2年後、2008年にiPhone 3GSがソフトバンクより発売されたことをきっかけに、日本でもスマホが爆発的に普及し始める。ユーザーの動向も急速に変化していった。2010年にはドコモからXperiaやGalaxyが発売となり、Androidスマホが本格的に日本に登場、国内初の4Gサービス開始によりインフラも出揃った。2010年は、日本の携帯電話市場における実質的な変革の年となった。

ソリューション事業へのシフト

以降、2011年からは、新規発売端末の市場は急速にスマホにシフトしていく。2011年を締めた時点で国内における携帯電話の年間販売数の半数がスマホとなった。同年にKDDI、2013年にはドコモからiPhoneが発売され、Android含めスマホがマルチキャリア化することにより、この流れはさらに加速していくこととなる。プライムワークスも、待ち受けコンテンツや電子書籍ストアソリューションをはじめ、サービスやアプリ開発などスマホ向けの新たな新技術、新サービスにどんどん投資を行っていった。同時に、ミドルウェアやサ―バーの開発、コンテンツ制作などに特化した子会社の設立やM&Aを推進し、開発体制の強化にも抜かりが無かった。

とはいえ、ユーザーの保有台数という観点からいうと、依然ガラケーが主体であり、スマホ向けサービスはなかなかビジネスとしては立ち上がらない日々が続く。
そういった中で次の路線として活路を見出したのがソリューション事業である。通信キャリアも、音声やデータを運ぶだけの無機質な「土管屋」として終わらないために、積極的に行動を起こしていた。ガラケーで築いたビジネスモデルを維持するためにスマホでのポータルサービスを企図したり、キャリア自身がコンテンツプロバイダーになるなど様々な試みが行われる。また、法人においてもガラケー時代はホームページさえ十分に作成されていなかったものが、パソコンと同期してスマホに対応していく流れが生まれてくる。これらのスマホが生み出す、社会的な大きなうねりを捉えてソリューションで対応していくことに舵を切ることを考えていく中で、これまでM&Aや合弁会社設立等々で増やしてきた子会社群を全て合同した体制を作るというアクションに繋がってくる。ネオスの誕生である。

カタリスト・モバイルのグループ化

プライムワークスにとってバンダイという企業の存在は特別な意味を持っている。当時、モバイルコンテンツ事業に注力していたバンダイネットワークス(2009年4月1日 バンダイナムコゲームスと吸収合併)は、豊富なコンテンツやキャラクターの配信を行っていた企業であり、NEC時代にはある面ではコンペティターであり、ある面では協業も行っている特別な関係でもあった。特にキーマンとなったのは、同社の取締役であり、プライムワークス創業後は池田と共同経営者となった高橋豊志氏である。高橋氏はバンダイネットワークスの立ち上げ、同社の経営戦略として、さまざまなモバイルベンチャーのへの出資や起業も行っていた。この中でプライムワークスも創業当初は資金的な援助や事業面での協業など、様々連携した活動を行っていた。

その高橋氏が2006年バンダイを辞め、会社を立ち上げた。のちにプライムワークスのグループ会社となるカタリスト・モバイルである。米国Adobe出身者が立ち上げた本社が米国にあり、その日本法人を高橋氏が一部出資する形で立ち上げた会社である。主にAdobe Flashモバイル版を用いた開発と提供を行う企業として歩み始めていた。これはプライムワークスにとっても朗報だった。カタリスト・モバイルが持つ技術と連携することで、ガラケーの画面上で動画やアニメーションを再生するなど、当時としてはリッチな表現のコンテンツ提供が可能であった。カタリスト・モバイルと協業することで、キャラクターが動く待ち受けや、アニメ―ションするメール絵文字などのソフトウェアのエンジンからコンテンツまで一気通貫で提供することが可能になるのである。そして、2008年5月にプライムワークスが上場した資金を持って、同年の11月に米国法人からこの日本法人をM&Aすることに成功するのである。

ネオス誕生、新たな船出へ

先にあった通り、スマホがガラケーに将来的には完全に取って代わるという読みの中で、大きくソリューション事業に舵を切るためには、結果として、このカタリスト・モバイルの技術開発力が重要な意味を持つことになる。カタリスト・モバイルは、上場企業のグループ会社となったことにより経営の安定度が増し、札幌に開発拠点を設けるなど人材採用を活発化させ業容を拡大する。2012年にプライムワークスは同社を吸収合併し、社名を新たに「ネオス」としてスマホ市場に挑戦していく体制を整える。ネオスとは、ギリシャ語で「新しい」を意味する言葉だ。インターネットとモバイルという時代の最前線に関わり続け、常に新しくなるサービスの開発に挑んでいくスピリッツを表現する言葉でもあった。本格的なスマホ時代が到来する中で、新たな未来を築くという強い決意を胸に、これまで築いてきた事業構造を大きく転換していくという厳しい航海が始まることとなる。